ITエンジニアは「氷売り」になるのか? AI時代のエンジニアの未来を考えてみた
ITエンジニアは「氷売り」になるのか?
「AIがコードを書くようになったら、ITエンジニアは不要になるのか?」
最近、このような話題をよく見かける。
しかし、少し視点を変えると、ITエンジニアの未来は、かつて存在した「氷売り」に似ているのではないかと思う。
昔、本当に存在した「氷売り」という仕事
冷蔵庫がない時代、人々は氷を必要としていた。
冷たい飲み物を飲みたい。食べ物を長持ちさせたい。暑い日に涼しくなりたい。
そのために、氷を切り出し、運び、各家庭に届ける仕事があった。
しかし、その後、冷蔵庫が普及した。
すると「氷を運ぶ仕事」は少しずつ必要とされなくなっていった。
消えたのは「氷」ではなく「氷を運ぶ仕事」
ここで大事なのは、人々は本当に氷そのものが欲しかったのか、という点だ。
おそらく違う。
人々が本当に欲しかったのは、氷ではなく「冷たい状態」だった。
冷たい飲み物を飲みたい。食べ物を保存したい。暑さを和らげたい。
つまり、氷はあくまで手段だった。
では、ITエンジニアはどうだろう
ITエンジニアも、これまで多くの時間を「作業」に使ってきた。
- コードを書く
- サーバーを設定する
- APIをつなぐ
- バグを修正する
- データを処理する
もちろん、これらは今でも重要な仕事だ。
しかし、AIの登場によって、こうした作業の一部は急速に自動化され始めている。
コード補完、エラー修正、ドキュメント作成、UI生成、テストコードの作成。
かつて人間が時間をかけて行っていた作業を、AIがかなりの速度で代替し始めている。
AIは「冷蔵庫」ではなく「冷媒」なのかもしれない
ただ、AIを冷蔵庫そのものと考えるよりも、「冷媒」と考えた方がしっくりくる。
冷媒は、冷蔵庫の中で働いているが、普段はほとんど意識されない。
私たちは冷蔵庫を開けて、飲み物が冷えていれば満足する。
その中でどんな冷媒が使われているかを気にする人は少ない。
AIも、将来的には同じような存在になるかもしれない。
今はまだ「AIを使っています」ということ自体が注目される。
しかし、やがてAIは裏側に溶け込み、存在が透明になっていく。
- 気づいたら予約が終わっている
- 気づいたら動画が編集されている
- 気づいたら資料ができている
- 気づいたら面倒な作業が片付いている
エンジニアに求められるものは変わっていく
もしコードを書くことが「氷を運ぶこと」だとしたら、これからのエンジニアに必要なのは、別の力かもしれない。
それは、ただ作る力ではなく、何を作るべきかを見極める力だ。
- 誰が困っているのか
- 何を楽にしたいのか
- どんな不安を減らしたいのか
- どんな体験を届けるべきなのか
- その仕組みは本当に必要なのか
つまり、技術そのものよりも、その奥にある人間の欲求を理解する力が重要になる。
「冷やしたい」というニーズは消えない
氷売りという仕事は、時代とともに姿を消した。
しかし、人間の「冷やしたい」という欲求は消えなかった。
むしろ冷蔵庫や冷凍技術によって、アイスクリーム、冷凍食品、物流、医療、スーパー、コンビニなど、さらに大きな産業が生まれた。
ITも同じだと思う。
コードを書く作業が変わっても、人間の欲求は消えない。
楽をしたい。早く終わらせたい。不安を減らしたい。学びたい。誰かとつながりたい。自分の仕事を前に進めたい。
こうしたニーズは、AIが発達しても残り続ける。
まとめ
ITエンジニアは、かつての氷売りと同じ道をたどるのかもしれない。
ただし、それは悲観的な話ではない。
氷を運ぶ仕事は消えたが、「冷やす」という価値は消えなかった。
むしろ、冷やす技術は進化し、社会全体に広がっていった。
同じように、コードを書く作業の一部がAIに置き換わっても、問題を解決したいという人間のニーズは消えない。
これからのエンジニアに必要なのは、ただコードを書くことではなく、人間が本当は何を求めているのかを見抜くことだ。